母の希望は「白い犬」。

ようやく見つけたのが、一頭のクリーム色のトイプードルでした。
とりあえず見に行ってみようと、
開店して間もない早い時間にペットショップへ行ったのですが――。

いました。
写真で見た、クリーム色の女の子。
でも、すでにお父さんと女の子で来ていたご家族が、その子を抱っこしていました。

「あー、一歩遅かったか……。」

すぐに手放すかなと思って、しばらく待ってみました。
でも、なかなか手放しません。
仕方がないので店内をぐるっと一周して、もう一度戻ってみました。
まだ抱っこしています。
もう一周回ってきます。
まだ抱っこしています。

「これは、もう決まっちゃうかな。」
「縁がなかったのかな。」

半分諦めかけていたところ、そのご家族がようやくその子を店員さんに返して、立ち去りました。
私は、クリーム色の子を抱いている店員さんのところへ行きました。

「すみません、その子、決まっちゃったんですか?」

「ちょっと考えると言って、いったんお帰りになりました」

「実は私、この子を見に来たんです」

「抱いてみます?」

「えっ、あっ、心の準備が・・・」
と思いつつも、言われるがまま、渡されて・・・

感動の対面かと思いきや、人の腕の中で大暴れ?!
眼鏡吹っ飛ぶ。

正直なところ、
「本当にこの子を飼うんだろうか……?」
と思ってしまった。

抱いた瞬間に何かを感じたわけでもありません。
「この子だ!」
という運命的な確信なんか何もありません。

むしろ「大丈夫かな私・・・」

目の前にいるのは、元気いっぱいのクリーム色の子犬。
聞けば、かなり活発な子なので、初めて犬を飼う人にはちょっと大変かもしれないとのこと。
でも、私は犬を飼うこと自体が初めてで
「活発なので大変」と言われても、その程度がわかりません。

どうしたもんかなぁ・・・と考えながら、ふと後ろを振り返りました。
すると。
今度は、私がその子を手放すのを待っているご家族が2組もいるではありませんか。

「えっ、どうしよう・・・」

この子を店員さんに返したら、次の人が抱っこする。
その人が「この子にします」と言ったら?
その瞬間、頭に浮かんだのは、

「手放したら、終わっちゃう……」

そして気がつけば、

「この子にします」と言っていました。

そうやってAlmaは、うちの子になることが決まりました。
他の犬は一頭も抱いていません。
比較もしていません。
何軒ものペットショップを巡って、たくさんの子犬の中から「この子!」と選んだわけでもありません。

母が「白がいい」と言い、
たまたま見つけたクリーム色の子を見に行き、
先に抱いていた家族が一旦考えることにして、
次に私が抱き、
後ろにはまた別の家族が待っていて、
「手放したら終わっちゃう」と思ったから決めた。

それだけでした。

だから、今振り返ってみても、
「出会った瞬間、運命を感じました」
なんて全くをもって言えません。

むしろ、
「本当にこの子でいいのかな?」
くらいに思っていました。

でも、不思議なことに。
人生の中には、そのときには何の意味も感じなかったことが、ずっと後になってから、
「ああ、あれはここにつながっていたんだ」
と思えることがあります。

Almaとの出会いも、私にとってはそんな出来事の一つになりました。

とはいえ、このときはまだそんなことは知りません。
まずはAlmaを迎える準備です。
我が家にやってくるのは、それから約2週間後。

その間、あれほど動物を嫌っていた母が、何度も同じことを口にするようになりました。
「私に懐くかしら。」

……えっ?!

懐かれたいんだ?